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君に届くまで

第80章 五稜郭にて



「ごめんて。そんなに心配しなくても俺達上手くやるよ?」

目の前にいた加州が、どうどうと宥め、それに倣って皆も宥め始めた。
長谷部は一つ大きく深呼吸すると、自身に渦巻く感情を治める。

「お前達は百歩譲って良しとする。だが、レンさんだけは別だ。あの人は何をするか分からない!お前達しか見張れる者がいないんだぞ!?」

長谷部にとって、レンは次が読めない宇宙人の様な人だった。
七海の本丸にいた時から教育係として付きっきりで指導しようとするも、目を離すとすぐにいなくなる、話を聞いているのかいないのか分からない、などと何もかもが彼の理解を超える行動をするのだ。
とてもじゃないが、野放しにして安心できる人ではない。

「…本人は聞いてないかもしれないけど。」

燭台切がそっと向こうを指すと、長谷部を含む彼等は揃ってそちらを向く。
すると、少し離れた所で座り、紙切れを見ながらポーチの中身を確認しているレンがいた。
レンの刀剣達はやれやれと肩を竦め、長谷部は頭を掻きむしった。

「レンさん!!」

長谷部は呼びかけながらずんずんと足音荒く近づいていく。

「何でしょう?」

レンは、何事かと小首を傾げながら手を止めて立ち上がる。

「あなたに一番聞かせたいのですよ!俺は!」

「何を?」

「何を、って…。今までの俺の話を聞いていなかったんですか!?」

「政府の出した条件を必ず守る事。危険に自ら首を突っ込まない事。必要以上に歴史に関わらない事。ですよね?」

「聞いているじゃないですか!!」

こういうところがよく分からないと、長谷部は頭を抱えた。
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