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君に届くまで

第80章 五稜郭にて




「しっかり頼むぞ。」

見送りに来ていた長谷部が、レン達に言う。
これで何回目だろう、と全員が思う。


五稜郭から時代を渡る事になっており、レン達は転移装置がある広間まで移動してきた。
そこにいたのが、準備をしていた長谷部。
彼は此度の事が気が気ではない様で、タブレットを片手に部屋を右に左に行ったり来たりと落ち着かない様子で歩き回っていた。
だが、レン達の姿を見つけると一目散に走ってきて、頼むぞ、頼むからな、などとしきりに言い出したのだ。

「本当に頼むぞ。途中で危ないと思ったら引き返しても構わない。レンさんを連れて必ず戻ってくれ。それから…」

長谷部は言っても言っても言い足りない様で、酸っぱい顔をする面々を前にもお構いなく言い続ける。
大和守は段々と聞いているのが面倒になり、こそっと隣の加州と話をし始めた。

「清光は内服とあんまり変わらないね。」

「いつもと近い方が落ち着くじゃん。そう言う安定だって安定の青色じゃん?」

加州は、赤銅色の着物に濡羽色の袴、大和守は、み空色の着物に深藍色の袴をそれぞれ選んでいる。

「僕も何となく青系の着物が落ち着くんだよね。」

大和守は微苦笑を浮かべながら返した。
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