第80章 五稜郭にて
「…いやいやいや。審神者なんだから。」
「いざって時には僕達ちゃんと守れるから。」
乱と大和守は手を横に振りながら、レンの考えを否定した。
刀剣が審神者を守るのは当然の使命であり、それを果たせないなど言語道断だ。
「女の子なんだから、女の子らしくこっちの着物着たら?」
加州は、近くに衣紋掛けにかかっている着物を指さした。
「似合ってると思うよ?」
燭台切もにっこりと笑いながらレンを促すと、何故かレンはにっこりと無機質な笑顔を浮かべた。
「いざ身の危険が迫ったら脱ぎ捨てていいですか?」
その場合、着物の下は下着である。
「…あんたには羞恥心はないの?」
あんまりな発言に加州は呆れ半分に半眼で突っ込んだ。
「ありません。私は自分の身を守る為なら何でもします。」
対して、レンは真顔で大真面目に答える。
いつかも聞いたセリフだな、と思いつつ加州は頭を抱え、他の面々はやれやれと肩を竦めた。
それを見たレンはにんまりと笑う。
「ということで、女物は却下でお願いします。」
「…やれやれ。君って子は…。分かったよ。」
燭台切は苦笑を浮かべて、レンの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
話のけりがついたところで、七海がぱんぱん、と手を叩く。
「さて。あなた達にも着物を着てもらうわ。試着室に入ってちょうだい。」
そう言って、レンが入っていた衝立の方を指さした。