第80章 五稜郭にて
ちょうどその時、レンが部屋の一角に設置されていた衝立の奥から顔を出した。
「色は変え終わりました?」
「えぇ、終わったわ。あなたはどう?着れた?」
「はい。まぁ何とか形にはなりました。」
そう言って出てきた姿は青藍色の着物に薄浅葱色の袴姿。髪は高く上げて結わえてあり、腰には脇差が差してある。
「少し動きにくいですが、許容範囲ですかね。」
レンは、着物の裾を少し掴んで引っ張りながら、右に左に後ろにと自身の姿を振り返る。
「ちゃんと着れてるから大丈夫よ。」
七海は少し笑いながらレンに答える。
「「男装…。」」
「似合ってるけど…。」
「どうせなら女の子の着物着てほしかったよね。」
加州、大和守、燭台切は至極残念そうに言い、乱は少し不満げに腰に手を当てた。
「嫌ですよ。何が悲しくて女物の着物を着なきゃいけないんですか。」
当たり前かの様に返すが、そもそもレンは女性だ。となれば、普通に考えて女性の着物が妥当である。
だが、レンの中にはその考えは微塵も浮かんでいない様子。
「戦闘になった場合、私は全く身動きが取れなくなっちゃうじゃないですか。」
あくまで自ら戦う事を念頭においているレンは、嫌そうに顔を顰める。