第80章 五稜郭にて
「…七海様、やっぱり…」
「くどいわ。決めた事でしょう?こうして叔父様だって説得して許可をいただいたんだから。」
やんわりと止めようとした長谷部の言葉を一刀両断にし、七海はどんと構えて腰に手を当てる。
「揉めたんですか?」
レンは少し面倒そうに七海を見る。
「まぁ、少しね。内輪揉めの様なものよ。」
「内輪揉めどころか時の政府を震撼させる様な許可でしょう。」
何でもない事の様に言う七海に、長谷部は頭が痛そうに額に手を当てながら言うが、彼女はどこ吹く風。
「これで解決に近づけるなら安いものだわ。」
それを聞いた長谷部は小さくため息をついた。
「…近侍も楽じゃないね。」
成り行きを見守っていた燭台切は、苦笑を浮かべながら長谷部を労う。
「本当に…。言い出したら聞きやしない…。」
長谷部はがっくりと肩を落とす。
これは、レンを連れていくしかない流れだろうな、と燭台切は思いつつ胃を押さえる。
この主も一度言い出したら聞かない性格だ。
それにこれだけ外堀を固められて、且つ前々から興味があった時渡りに乗らないとは思えない。
燭台切はつらつらと思いながら隣を見ると、レンは許可書を読み直しながら何やら思案している。
「…まぁ、ここまでお膳立てされたら行くしかありませんね。」
レンは少しうきうきしながら答える。
「そう言ってくれると思っていたわ。」
七海もにっこりと笑いながら答えた。
「「やっぱりこうなった…。」」
燭台切と長谷部は揃って項垂れる。
「じゃ、もっと詳しい情報をください。」
「分かったわ。場所を移しましょう。」
レンと七海は立ち上がり、燭台切と長谷部もそれに倣ってすごすごと立ち上がった。