第80章 五稜郭にて
「なら、条件を出しましょう。どんな捜査をしているのかは知りませんが、歴史改変の阻止というからには、現地に刀剣を派遣しているのでしょう?」
「えぇ、そうよ。」
「現地に行くメンバーに私も加える事。」
燭台切はそれを聞いた途端、驚愕の面持ちで、ばっとレンを見る。
「更に、歴史上の人物にある程度関わる事を許可してください。この二つの条件なく手を貸す事は出来ません。」
「レンちゃん!?」
何を言い出すんだ、と言わんばかりの燭台切を、レンはちらっと見てから、視線を七海に戻す。
「その時代に刀剣を送るにしても、預かり知らぬところで誰かを失くすのは嫌ですし。自分の目で確かめたいので。」
レンに無理難題を言っている自覚はあった。
この世界の規則として、時代を渡れるのは刀剣のみ。
人間が渡る事は出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。何れにしろ、何か調整やら許可やらは必要になってくるはず。
つまり言外に、そんな事出来ないだろう、とレンは言ったのだ。
確かに七海に借りはあるが、死地だと分かっていて言われるがままに彼等を送る気は更々ない。
だが、七海に動じたりなどの変化はなく、代わりに長谷部が頭を抱えた。
「あなたならそう言うと思って、許可を取っておいたわ。」
すっと差し出された紙は、”許可書”と書かれたものだった。
目を通してみると、時代を渡る事、時間軸の事などの秘匿事項を漏らさない条件の上、歴史的人物に関わる事の許可を謳ったものだった。それも、レンのみに許された特別措置らしい。
「…随分と準備がいいですね。」
「こちらもそれだけ切羽詰まっている、ということよ。」
レンはてっきり断れるものだと思っていただけに複雑な気分になった。
対して、七海は満足そうに口元に弧を描く。
長谷部はその間顔色を悪くしっぱなしである。