第19章 左文字の記憶
夜の帳が下りた頃、皆揃って大広間に戻って来た。
江雪は変わらず、眠る小夜の側に座っている。
「資材の準備ができました。治しましょう。」
レンは江雪に言うと、彼は頭を垂れる。
「宜しくお願いします。」
小夜の刀を見せてもらうと、大きな傷が2ヵ所入っており、ギリギリ首の皮一枚繋がっているような深さだ。他にも擦り傷が多数ある。
ただ、薬研の時と比べるとそう難しくはなさそうだ。
レンは小夜の刀に手を翳しチャクラを練る。玉鋼があっという間に無くなるが、あまり治った気がしない。もう一つ試しに使ってみるも、あまり状態は変わらなかった。
「変化ありませんね…。」
どれどれと皆で刀を覗き込む。
「こんなものじゃないのか?」
「薬研兄さんの時は分かりやすかったです。玉鋼を一つ使うたびに一つ一つの傷が埋まっていきましたから。」
「確かに小夜ちゃんの治りは変わらないね。」
「ま、まさか拒絶してらしゃっるわけじゃ…!」
お付きの狐が慌ててレンを見る。
「何とも言えませんね。誰か試しに拒絶してみません?」
レンが言うと皆一様に嫌な顔をする。
「…うん、嫌なことはわかってますよ?
ただ、私しか治す人がいない以上、感覚が分からなければ対策しようがないですよ?」
「…仕方ない。俺がやってみる。」
薬研は小さくため息をつくとレンに手を差し出した。
「いきますよ…。」
レンは薬研の手を握り、チャクラを流す。
すると握った手が弾かれるように解けた。
「成程、少なくても反発があるんですか。」
「…そうみたいだな。」
あっけらかんとしているレンに対して、薬研は何処となく落ち込んでいる。
「…そこまで落ち込む程なんですか?」
レンは理解も共感もできない為、沈む薬研を何とも言えない思いで見る。
「…そこまで落ち込むことなんだよ。大将には分からないだろうがな。」
薬研はレンの言葉を受け、ささくれる。