第78章 番外編1
レンが呆然としていると、気を失っている筈の鶴丸の目がパチリと開いて、すくっと起き上がった。
「どうだ!驚いたか!?」
突然かけられた声に、レンはびくりと体を震わせて驚いた。
何がどうなっているのか、まるで分からない。
「「「いやったぁぁぁあああ!!!」」」
驚いた彼女を見た、鶴丸、加州、乱は飛び上がって喜んだ。
「大丈夫かい?」
燭台切が苦笑して、レンの肩に手をかける。
「ごめん、怪我は嘘なんだ。」
「誰も怪我なく帰って来たよ。大丈夫。」
「俺達のこれはペイントだ。」
加州、乱、鶴丸は、レンの周りに寄り集まってにこやかに言うが、彼女はまだ呆然としたままだ。
「…ペイント…?」
レンは呟きながら目の前の鶴丸に付いた血糊を指で掬って確かめる。
すると、ねとっとした感触と共に石油製品独特の臭いがつんと鼻を刺す。
「ペイント…。」
つまりは、嘘、ということになる。
レンは、絵の具の付いた手をぎゅっと握る。
「レンちゃん…?」
喜ぶ彼等の中で燭台切がレンの異変に気が付いた。
「ペイントですか。」
ゴゴゴゴ…、と音が聞こえてきそうな程に、神気が膨れ上がり、部屋中に圧が広がっていく。
そこで、漸く手を叩いて喜んでいた鶴丸達もレンの異変に気が付いた。
「まずい、鶴さん逃げて!」
燭台切は、弾かれる様に鶴丸に呼びかけ、彼もはっと我に帰り、慌てて戸口から逃げて行く。
「鶴丸国永〜!!喧嘩売るなら受けて立ってやる!!」
レンの咆哮が本丸中に響き渡った。