第18章 完成した薬
薬研達が厨に戻ると、そこはうず高く積まれた薬草の類で溢れかえっていた。
「あ、おかえりなさい。」
レンが薬草の山の麓から顔を出す。
「全種類取ってきたんで、確認してください。」
レンは何でもないことのように言うが、これはとんでもない量だ。
「ま、まさか、薬草取り尽くしたってことは…ないよな?」
薬研は恐る恐る尋ねる。
「ちゃんと少し残しておきましたよ。三月程すればまた生えてくるでしょうよ、きっと。」
そんなに阿呆ではありません、とレンは不服そうな顔をする。
「とりあえず、もう一回作成をお願いします。」
その時、燭台切が茣蓙を持って入ってきた。
「こっちにもあったよ。…って、また増えてる…。」
燭台切は何とも言えない苦い顔をした。
「すみません。これで最後ですから。ちゃんと後片付けしますから。」
レンは若干焦りつつ、燭台切を宥める。
マイペースなレンが焦る様子は何とも珍しい事だ。
燭台切は小さくため息をつくと、レンに茣蓙を渡した。
その様子を見ていたお付きの狐は、やれやれと首を振る。
「やはり、予想の斜め上を飛び越えてくる人間ですね。」
五虎退は呆然とするばかりだ。
薬研が時々、薬草を取りに出かけているのを知っている。いつも一日かけて、やっと小さな籠に取れる程度なのだ。それが目の前にうず高く積まれている様は、正に圧巻だ。
「これは作りがいがありそうだ。」
薬研は嬉しそうに言った。