第78章 番外編1
大倶利伽羅が書類を書き進めていると、開けていた窓から三日月と獅子王の声が聞こえてくる。
「今日のずんだ餅は一際美味いな。」
「こりゃ絶品だな。」
聞こえてきた会話に、大倶利伽羅はごくりと唾を飲み込んだ。
おそらく、すぐ下の共同部屋の縁側で食べているのだろう。
もう、暫く口にしていない好物に、彼の頭はずんだ餅でいっぱいになってしまう。
「…行って帰って来るだけなら…。」
大倶利伽羅は、手に付かなくなった書類を片付けるとメモ帳を取り出す。
そして、レンへの伝言を書き残すと、警戒しながら部屋を出た。
“伽羅ちゃんへ
冷蔵庫に伽羅ちゃんとレンちゃんの分が入っています。
二人で食べてね。”
厨で置き手紙を見つけた大倶利伽羅は、早速冷蔵庫の中を確認する。
すると、伝言通り白い箱に綺麗に箱詰めされたずんだ餅を二箱見つけた。
思わず、大倶利伽羅の顔が綻ぶ。
彼はそれを持って厨を後にした。