第78章 番外編1
「こんなんで引っかかるかな…?」
「案外引っかかるかもよ?レン、怪談嫌いみたいだし。」
書斎部屋で何かを仕掛けている厚と鯰尾は、小さな声でひそひそと話す。
「さっき音がしたよ…。もう起きるかも…。」
見張りの小夜が襖に耳をつけて中の様子を見張る。
「よし、終わった…。撤収するぞ…。」
薬研の声で、彼等は部屋を後にしようと立ち上がった。
すると、ひた、ひた、ひた、と部屋の向こうから聞き慣れない足音近づいてくる。
「な、何…?」
「え、まさか…。」
「いやいや、ないでしょ…。」
彼等は顔を引き攣らせて互いの顔を見る。
その間にも、一歩一歩足音は近づいて来る。
ひた…、ひた…、ひた。
すると、出ようとしていた扉の前でその足音は、ぴたりと止まってしまった。
先頭にいた厚は後退りする様に一歩下がった。
「ど、どうする?」
「どうするってったって…。」
厚は、隣にいた薬研の腕の服を引っ張りながら尋ねると、薬研は青褪めた顔で前を見ながらごくりと唾を飲み込んだ。
「…開けてみる…?」
小夜が不安そうに問うと、鯰尾はとんでもないとばかりにかぶりを振った。
「…でも、ここにいる訳にもいかないし…。」
厚が言うと、彼等は揃ってうーん、と考え込んでしまう。
すると、
カリ、カリ、カリ…
「「「「ひっ……!」」」」
逡巡している彼等に痺れを切らしたかの様に、襖を爪で引っ掻くかの様な音が聞こえてきた。