• テキストサイズ

君に届くまで

第78章 番外編1



「こんなんで引っかかるかな…?」

「案外引っかかるかもよ?レン、怪談嫌いみたいだし。」

書斎部屋で何かを仕掛けている厚と鯰尾は、小さな声でひそひそと話す。

「さっき音がしたよ…。もう起きるかも…。」

見張りの小夜が襖に耳をつけて中の様子を見張る。

「よし、終わった…。撤収するぞ…。」

薬研の声で、彼等は部屋を後にしようと立ち上がった。
すると、ひた、ひた、ひた、と部屋の向こうから聞き慣れない足音近づいてくる。

「な、何…?」

「え、まさか…。」

「いやいや、ないでしょ…。」

彼等は顔を引き攣らせて互いの顔を見る。
その間にも、一歩一歩足音は近づいて来る。

ひた…、ひた…、ひた。

すると、出ようとしていた扉の前でその足音は、ぴたりと止まってしまった。
先頭にいた厚は後退りする様に一歩下がった。

「ど、どうする?」

「どうするってったって…。」

厚は、隣にいた薬研の腕の服を引っ張りながら尋ねると、薬研は青褪めた顔で前を見ながらごくりと唾を飲み込んだ。

「…開けてみる…?」

小夜が不安そうに問うと、鯰尾はとんでもないとばかりにかぶりを振った。

「…でも、ここにいる訳にもいかないし…。」

厚が言うと、彼等は揃ってうーん、と考え込んでしまう。
すると、

カリ、カリ、カリ…

「「「「ひっ……!」」」」

逡巡している彼等に痺れを切らしたかの様に、襖を爪で引っ掻くかの様な音が聞こえてきた。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp