第76章 おわりのおわり
「レン!」
部屋の戸口から叫び声にも似た声がかかりそちらを向くと、鶴丸が呆然とした様子で立っていた。
次いで、ゆっくりと一歩を踏み出し、レンに向かって走り出す。
「心配したぞ!」
言いながら、彼はレンを引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。
その時、鶴丸の匂いがふわりと鼻腔を掠めて、彼女の頬が思わず緩んだ。
だが、その余韻に浸る間もなく、
「「「え!!?」」」
本丸中に響いたのではないだろうか、と思うような大合唱が聞こえてた。
かと思うと、ドタドタと階段を駆け上がる音が響く。
「レン、起きたの!?」
「目、覚ました!?」
「あ、布団が空!」
「どこ!?どこにいるの!?見えない!!」
顔を出したのは、乱、厚、鯰尾、加州だった。
相変わらず騒々しい人達だ、と思うと共に、やけにリアルな夢だな、とレンは思う。
先程の夢と違い、彼等の取りそうな行動を忠実に再現している。
反応が無いレンを不思議に思ったのか、鶴丸が手を緩めて身を離した。
駆けつけた刀剣達も、何だ何だと様子を見にレンを覗き込んだ。
それをレンも黙ったまま見返すと、鶴丸の顔が見る見る内に泣きそうに歪んでいく。