第76章 おわりのおわり
“生きろ。”
これまで何度自分に言い聞かせてきた言葉だろう、とレンは思う。
時にはその意味も何度も問うてきた。
リヨクに会うことで、その意味も漸く知ることが出来た。
レンは涙を止めることが出来なくなった。
「…ずるい…。」
この手を離したくなかった。
でも、そう言われてしまえば行かない訳にはいかない。
リヨクも泣きそうに笑いながら、そっと手を離した。
『悪いな…。ずるいついでに後一つだけ。』
レンは涙を拭ってリヨクを見る。
『俺のことを覚えててくれ。この先もずっと。』
リヨクはそう言ってにっと笑う。
『俺がお前に願うのは、それだけだ。』
レンは、涙を流しながら何度も何度も頷き返した。
『本当、泣き虫だな。お前。』
リヨクは少し嬉しそうに言うと、レンをそっと抱きしめる。
記憶にある限り、これがリヨクからの初めての抱擁だった。
「忘れないから。絶対、リヨクを忘れない。」
レンもリヨクを抱きしめ返す。
しがみつくように。
温もりを覚えておくように。
『じゃあな。』
リヨクがそう言った途端、辺りは眩い光に包まれた。
レンは驚きながらも更にリヨクにしがみつく。
だが、全てを白く染めるように光が満ちて、やがて何も分からなくなってしまった。