• テキストサイズ

君に届くまで

第76章 おわりのおわり




“生きろ。”


これまで何度自分に言い聞かせてきた言葉だろう、とレンは思う。
時にはその意味も何度も問うてきた。
リヨクに会うことで、その意味も漸く知ることが出来た。

レンは涙を止めることが出来なくなった。

「…ずるい…。」

この手を離したくなかった。
でも、そう言われてしまえば行かない訳にはいかない。

リヨクも泣きそうに笑いながら、そっと手を離した。

『悪いな…。ずるいついでに後一つだけ。』

レンは涙を拭ってリヨクを見る。

『俺のことを覚えててくれ。この先もずっと。』

リヨクはそう言ってにっと笑う。

『俺がお前に願うのは、それだけだ。』

レンは、涙を流しながら何度も何度も頷き返した。

『本当、泣き虫だな。お前。』

リヨクは少し嬉しそうに言うと、レンをそっと抱きしめる。
記憶にある限り、これがリヨクからの初めての抱擁だった。

「忘れないから。絶対、リヨクを忘れない。」

レンもリヨクを抱きしめ返す。
しがみつくように。
温もりを覚えておくように。

『じゃあな。』

リヨクがそう言った途端、辺りは眩い光に包まれた。
レンは驚きながらも更にリヨクにしがみつく。
だが、全てを白く染めるように光が満ちて、やがて何も分からなくなってしまった。

/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp