第76章 おわりのおわり
すると、とん、と後ろから背中を押される。
「……!」
驚いて後ろを見ると、リヨクが背を押していた。
『行け、レン。』
優し気に笑うリヨクを見て、胸がぎゅっと締め付けられた。
ここにいたいという想いと、あちらに行きたいという想いがせめぎ合う。
『お前の場所はあっちだ。ここじゃない。』
その言葉にずきんと胸が痛んだ。
けれど、リヨクの言う通り一緒にはいられないとも思う。
『大切なものを守るんだろ?』
レンは目に涙を溜めながらもゆっくりと頷く。
それでも、足は縫いとめられたようにその場から動けなかった。
何が正しい選択かなんて分かっているのに、この期に及んでも逡巡する自分を少し情けなく思う。
リヨクはそんなレンを見て、少し困ったように笑った。
『…なら、こう言ったら動く気になるか?』
その言葉にレンは首を傾げる。
リヨクはレンの手をぎゅっと握って自身の方に向かせると、しっかりと彼女を見た。
いつの間にかリヨクと背丈が同じ位に戻っている。
『生きろ。幸せを掴め。』
レンは目を瞠った。