第76章 おわりのおわり
その時、後ろから声が聞こえる。
『戻れ、レン。もう俺の影を追うな。』
リヨクの声に、レンは反射的に振り向いた。
『夢はもう終わりだ。』
その言葉に、レンは息を呑む。
「…でも…。」
レンは、口籠もりただただリヨクを見つめることしか出来ない。
認めなきゃ。
でも、認めたくない。
離れたくない。
逡巡するレンを知ってか知らずか、リヨクは穏やかに微笑んだまま言葉を紡ぐ。
『お前には大事なものが、もうあるだろ?だからそれを守れ。』
レンはそれを聞いて、はっと隣を見たが、そこには誰もいなかった。いないどころか、いつの間にか全てが消え失せていた。
レンは困惑したままリヨクに視線を戻すと、彼は黙って真横を指さした。
その先には…
「…本丸?」
遠くに本丸が見えた。
微かに楽しそうな声も聴こえてくる。
レンはもっとよく耳を澄ます。
乱の声、
厚の声、
加州の声、
燭台切の声、
歌仙の声…。
ーあぁ、あそこへ行きたい…。
レンは見入りながら、自然とそんなことを思い始めた。