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君に届くまで

第76章 おわりのおわり



「鶴さん!?」
「鶴丸!?」

レンの耳に2人の声が重なって聞こえてきて、どきりと心臓が大きく飛び跳ねた。

鶴丸。

その名前に聞き覚えがあった。
レンはよく知っている。
大事な大事な名前。

固まっているレンを他所に、彼女を抱きしめていた白い人は少し身を離して後ろを振り返る。

「光坊!貞坊!レンだ!レンがいたぞ!」

レンは、手を振っている白い人を呆然と見上げた。

「…あなたは…、鶴丸、ですか…?」

何とも情けない声が出たな、とレンは頭の片隅で思う。

「ん?そうだぞ。俺は鶴丸国永だ。何だ?驚いたのか!」

朗らかに笑う彼を、レンは驚愕に目を見開いて見つめる。

鶴丸国永。

その名を聞いた瞬間、全てのことを思い出す。
初めて会った時、
喧嘩をした時、
傅かれた時、
抱きしめられた時…。

様々な記憶が蘇った。


燭台切光忠。
太鼓鐘貞宗。

彼等のことも思い出す。

「…何やってんだ。お前等。」

店から顔を出したのは大倶利伽羅だった。

「伽羅ちゃん。レンちゃんがね…」

話し出した彼等の言葉はレンの耳にはもう入ってこなかった。



この前街中ですれ違ったのは乱だった。
店の前で見かけた兄弟は薬研と厚。
屋台で肉まんを売っていたのは加州と大和守。


ー全部、全部思い出した。


レンの中の焦燥が綺麗に消えていく。


ーあぁ、気付いて良かった…。


だが、満ちていく安堵に比例するように後悔も広がっていく。
思い出したくなかったのだ。
思い出せばリヨクが夢だと、幻だと分かってしまう。

レンは震える手で自身の口元を覆う。

泣きたいくらい嬉しくて、
喚きたいくらい悲しかった。

ーあぁ、私はどうすれば…。

レンは途方に暮れた。

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