第76章 おわりのおわり
「いらっしゃ〜い!」
「お嬢ちゃん、コレどうだい!?」
「こっちの野菜、お安くしとくよ!」
朝日が照り、朝靄が出ている時分から、街は既に活気付いている。
市場が出ていて、屋台も多く、人で溢れていた。
レンはそれらに目をくれることなく、真っ直ぐに引合せ処へと向かう。
「いらっしゃいませ〜!」
引合せ処では、既に暖簾がかけられて店が開いていることが伺える。
その入り口で、白い袴姿の男が呼び子をしていた。
ーあの人…。
レンは立ち止まる。
また焦燥感が彼女の中に込み上げた。
ちりちりと焦がれるような、ずきずきと痛むような、形容し難い感覚に呑み込まれる。
ーどうして…?
考えても考えても答えは出てこない。
ただただ、白いあの人に手を伸ばしたくて堪らない。
レンは特に痛む胸の辺りを鷲掴む。
そうしていると、白い人がレンに気が付いた。
すると、ぱぁっと顔を輝かせて彼女の方へと走り出す。
「レン!」
名前を呼ばれてどきりとした。
初めて呼ばれる筈なのに、酷く懐かしい気がする。
「レン!会いたかったぞ!」
そう言いながら、白い人は彼女を抱きしめた。
抱きしめられてから、レンは自身の体が大人になっていることに気がついた。
驚愕に目を見開いた。
それと同時にとても安堵していた。
先程までの焦燥感や胸の痛みが無くなっていく。