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君に届くまで

第74章 忍界大戦7



「…俺は、あの場で何をすることも出来なかった。やったのは鶴の旦那と大将だ。俺じゃない。」

鶴丸は、ああ言ってはくれたが、薬研には気遅れしかなかった。

「礼なら旦那にするといい。」

薬研の言葉に、いのは首を横に振る。

「いいえ、薬研に言うわ。だって私に言葉を尽くしてくれたのは薬研じゃない。あなたがああ言ってくれたから、あの時すんなり離隊を後押し出来たのよ?」

言葉って大事よ、といのは笑う。
薬研はあの時か、と邪気のせいで部隊から離脱した時を思い出す。

「本部に着いたのだってギリギリだったんでしょ?あの時、あなた達を信じられなくて一悶着起きてたらきっと間に合わなかったわ。」

いのは薬研に向き直った。
薬研は驚いて、いのを見遣る。

「だから、ありがとう。あなたがいてくれて良かった。」

そう言って、にっと笑う彼女を見て、薬研は瞠目する。
過去、先代の審神者達には”お前なんか要らない”、そう言われることが多々あった。
レンは大切にはしてくれるが、言葉を返してくれることはあまりなかった。
こんなに嬉しいものなんだな、と薬研は込み上げて溢れそうになる想いを宥める。
うっかり涙なんか溢した日には、いのの顔をまともに見れなくなりそうだから。

「あら、照れてるの?顔が赤いわよ。」

いのの指摘を受けて、初めて自分の顔が熱っていることを自覚する。

「み、見るなよ。」

薬研は言いながら、彼女から顔を背けて隠した。

「うぶなとこあるじゃない。」

いのは、からからと笑った。

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