• テキストサイズ

「我が背子を」「風に散る」「この春は」

第1章 手紙


「総悟」
呼び掛けに振り向いた沖田の顔を見て、近藤の笑顔はわずかにひきつった。
まだあどけなさを残す顔は、ここ数日、眠れていない事を如実に表している。
「なんですかぃ?」
緋色の瞳は、目の前の近藤を通り越して、遥か遠くを覗いているようだ。
「いや、トシとも話したんだけどな、お前、しばらく休みをとったらど…」
「必要ありやせん」
ピシャリと音がしそうな程、即座に断った沖田に、珍しく近藤の眉間にシワがよる。
「しかしな…」
「土方のヤローがどう言ったか知りやせんが、俺は休みなんていりやせんぜぃ。話はそれだけですかい?じゃあ、失礼しやす」
そう言って沖田が立ち去ると、近藤は数歩下がった柱の影に訴えた。
「トシ~。やっぱ総悟断るよ、どうしよう」
近藤の3倍は深いシワを眉間に刻んだ土方は、タバコの煙と共にため息を吐いた。
「近藤さん、局長命令として言ってくれよ。普通に言ったんじゃ、あいつ聞きやしねぇ」
「けどさぁ。まだ四十九日も明けてないし」
「だから休ませてぇんだ。武州の家の片付けして来いとでも言やぁ良いだろ」
「あぁ、なるほどね…それで、うまくいくかなぁ」
「近藤さんの言う事なら聞くさ。俺の言う事なんざ、反発しかしねぇけどな」
真選組局長と副長は、同時に長いため息をついた。
/ 7ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp