第1章 手紙
「我が背子を 大和へ遣るとさ 夜更けて 暁露に 我が立ち濡れし」
『私の弟を大和に見送って夜の更ける中、やがて朝方の露に濡れるまで、私はずっと立ち続けたのです/大伯皇女/万葉集』
「風に散る 花橘を袖に受け 君が御跡と思いつるかも」
『風に吹かれて橘の花が私の袖にこぼれ落ちました。あの方は、今どうしているでしょう。懐かしい日が思い起こされます/詠み人知らず/万葉集』
「この春は たれに見せむ亡き人の かたみにつめる 峰の早蕨」
『姉君の亡くなった今年の春は、いったい誰に見せたら良いのでしょう。貴女が亡き父君の形見として摘んでくれた、カゴに入った山の早蕨を/紫式部/源氏物語(早蕨)』
橘の花言葉は「追憶」です。