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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第43章 はじめまして




パカっと、蓋を持ち上げるエリ。
その中身を見ても、ボク達は誰も声を上げなかった。

しばらくしてから楽が、ポツリと呟いた。


「…本当に、大したものじゃないな」

『だから言ったでしょう』


実はいま貶しているのが、好きな人の手作り弁当だと知ったとき。楽は一体どんな反応を見せるのだろうか。
それを想像するだけで、口の端が上がってしまう。


「真っ白、だね…。えっと春人くん、これは…」

『エノキポン酢です』

「居酒屋かよ!!」

「キミの家の冷蔵庫には、エノキしかなかったんだね。可哀想」


その弁当は、一面真っ白だった。他のおかずなど一切ない。飾りネギですら、存在しない。
ただ、細いキノコがびっしりと敷き詰められているのだ。


「嫌なもん見た。俺はこっちの旨そうな弁当いただくぜ」

「楽、それは言い過ぎだろ?でも、ネギくらいあればもう少し美味しそうに見えると思うよ?」

『ネギがありませんでした』いただきます


楽は幕の内弁当を選び、蓋を開ける。そして、いただきますと言ってから箸を割った。

エリも同じ様に、食べる前に手を合わせてからエノキを食す。


「センスが一切感じられねぇ…」

『センスはなくても、栄養はありますよ』

「そんなに栄養が欲しいなら、栄養ドリンク飲めば?」

『天。それは駄目ですよ。栄養ドリンクとは名ばかりで、あれは元気の前借りに過ぎませんからね』

「ふぅん。
まぁそれにしたって、もう少しどうにかなったとボクも思うけどね」

『…たしかに、エノキから水分が出て味が薄くなってますね。もう少しポン酢を多めにかけるべきでした』

「はは。天が言ってる もう少し は、そう言う意味じゃないと思うなぁ」


4人で輪になり、それぞれの弁当をつつく。


「あんた、料理出来ないわけじゃねぇよな?なのに何でこんなことになっちまうんだよ」

「こ、こんなことって」

『レシピを見ないで作った料理は、こんなものでしょう』

「いーや。間違ってるぞ、それ」

「はは。レシピを見て作れば、春人くんは大抵上手く作れるもんな」

『逆に、レシピを見ながら作れない料理とは?正解が書かれた物を見て作れば、出来て当然でしょう』

「お前いま、世の料理人 全員を敵に回したぞ」

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