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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第43章 はじめまして




【side 九条天】


少しは何かが、変わると思っていた。

しかし現実は、何ひとつ変わりはしなかった。春人がエリで、男が女だったという事実を ただ知っただけ。

今日も、ボク達は。
ただのアイドルと、ただのプロデューサーだ。


『お待たせしました。お弁当買って来ましたので どうぞ』

「あー…腹が減った」

「疲れたね、こんなにしっかりとダンスレッスンの時間取れたの久し振りだから」

「でも、貴重な練習時間を効率的に使えたんじゃない?」

「春人は本当に練習の虫だよな」


ボク達は、彼女が弁当屋で購入して来たものを袋から取り出して行く。
ハンバーグ弁当に、幕の内。それに、鳥の照り焼き弁当だった。


『レッスンは、1日休めば自分に分かり、2日休めば周囲に分かり、そして3日休めば観客に分かる。これは有名なバレーダンサーの名言ですが、これと同じ事が貴方達にも』

「おい。弁当3つしかねぇぞ。あんたの分は買ってこなかったのか」

『ちょっと、私の話を聞いてますか』

「あぁ、聞いてる聞いてる」


話の途中で腰を折られたエリは、不服そうな表情を浮かべた。
しかし、きちんと楽の質問に答えてやる。


『今日の私のお昼は、自作の弁当です。少しだけ朝、時間があったので』

「珍しいな」

「へぇ、春人くんの手作り弁当か!」

「ふぅん。中身見せてよ」


どこか誇らしげに、弁当箱を取り出したエリ。そんな彼女を取り囲むようにボク達は3人、それに注目した。


『べつにいいですけど、中身なんて見ても何も面白くないですよ。ただの冷蔵庫整理で作っただけなので、大したものじゃないですから』

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