第43章 はじめまして
『私が、この世で最も愛している男性アイドルグループです。
貴方がTRIGGERの真ん中に立ち続ける限り、貴方は私の “ 特別 ” ですよ』
「……なるほどね。よく分かったよ」
私は、小さく息を吐いた天の両肩に手を置く。そして、今度はしっかりと彼の瞳を真正面から見つめた。
『天。私を諦めなさい。
貴方が私の担当アイドルでいる限り、私は貴方を愛しません。
そして…貴方にTRIGGERは捨てられない』
「…それは、確かにキミの言う通りだ」
分かり切っていた。彼からTRIGGERを取り上げられる者など、この世に いはしない。
天自身もそれを分かっているのだろう。私の無情とも取れる言葉に、素直に頷いた。
しかし、私は理解出来ていなかったのだ。九条天という男の、本質を。
「分かった。じゃあ諦めるよ。特別を捨てるのは」
『……え?いや、諦めて欲しいのは、私のことで…』
天の予想外の言葉に、顔を出していた春人も、思わず引っ込んでしまう。
「決めたから。キミの全部を手に入れてみせる。
TRIGGERの九条天をキミが想う “ 特別 ” もボクのものだ。
それに加えて、いつか絶対に “ ただの九条天 ” を好きだと、エリに言わせてみせるから。覚悟して」
『………っぷ。あは、あはははっ!なにそれ、天!言ってること無茶苦茶だよ!ちゃんと私の話聞いてたの?』
そう。彼は、欲したものを簡単に諦めたりするような 柔な人間ではないのだ。
あまりに自分本位の考え方に、私はつい吹き出してしまった。
それになんだか、この横暴な態度と考えが 実に彼らしくて可笑しかったのだ。
「…人の真剣な言葉を笑うなんて、酷いよ」
『ふふ、ごめん!』
「いや、許さない」
立ち上がった天が目の前に立ち、私の上に影が伸びた。不思議に思い、見上げる私に告げる。
「また罰を、受けてもらうよ」
ゆっくりと迫り来る天の瞳が、閉じられてゆく。それを見れば、私がこれから受ける罰の内容は手に取るように分かった。
頬を、さらりとくすぐる天の髪。顎に優しく添えられた指。
与えられたのは、罰と言うには甘過ぎる、丁寧な口付け…。