第43章 はじめまして
天が視線を下向けると、その綿毛のような白い睫毛も伏せられた。
「キミに大人の男として認識してもらえない四葉環を見たら…
胸が、傷んだよ。他人事のはずなのにね」
『……天』
「ねぇエリ。聞いてもいい?」
『なに…?』
「ボクは、四葉環と同じ?
大人のキミから見れば…ただの、年下の可愛い男の子でしかない?」
環と天は、年齢的にはひとつしか違わない。しかし、私にとって天は 子供には見えない。
精神年齢が高い故か、見た目が大人びているせいか、その子供離れしたプロ意識の賜物か。理由は分からない。
理由は定かでない、が…。
誰が、この美しい青年を 子供として捉える事ができるだろう。
『私に、とって 貴方は…特別』
「答えになってないよ」
薄く笑って、天は言った。
透けていないだろうか。私の心は。本心を悟られないよう、彼から目を逸らす。
「でも、そうか。特別、ね。
四葉環は、キミの “ 特別 ” を捨てたよね。
彼は、大人の男としてキミから扱ってもらえる代わりに、昔馴染みというアドバンテージを差し出した。
ねぇ。それならボクは…一体どんな “ 特別 ” を差し出せば、エリに 男 として見てもらえるのかな」
天は、こちらを覗き込む。そして、自分の手を私の手に そっと重ねた。
『…貴方に、この特別は捨てられない』
「教えてよ。聞いてみなければ分からない。キミは どんな特別な想いを、このボクに持ってくれているの」
『…それは』
私は、瞳を閉じる。すると、私の奥から春人が顔を出す。
『それは、貴方がTRIGGERセンター。九条天という事実です』