第43章 はじめまして
「楽に言わない方がいい理由は、もっと明白だよね」
『私が、Lioだって。絶対に気付かせない為』
「正解。あの楽のことだから、キミが長年の想い人だって分かったら…
とんでもなく、ガツガツ来るよ」
『ガ、ガツガツ…』
私は想像した。
所構わず、私を落とさんと躍起になる楽を。現場で、熱く甘い言葉を私に向け続ける彼の姿を。
おそらくだが、楽は龍之介よりは上手くやるだろう。カメラの前では、きっとアイドルモードに切り替えてくれる。
しかしその分、プライベートは凄いことになりそうだ。遊び人の名に賭けて、全力で私を物にしようと尽力するに違いない。
「まぁ…、楽には少し酷だけどね。彼は、本当にLioに会いたがっているから」
『…それは、分かってるつもり』
「でも、決まってるんでしょ?覚悟」
『うん。楽の好きな人がLioだって知った時に。覚悟は決めた。
嘘を突き通すことが、楽を傷付ける結果に繋がったとしても。私は、TRIGGERの為に楽を犠牲にする』
「…ふふ。本気で欲しい物の為に、大切なものをも犠牲にする覚悟か。いいね、惚れ直しそうだ」
私の決意を確認した彼は、至極満足そうに笑ってみせた。
『うん。とにかく、天の意見 採用。あの2人には、このまま内緒にしておこう』
「…まだあるよ。内緒にしておいた方が良い理由」
『え?何だろう。聞かせてくれる?』
「ボクの、気分がいいいから」
向かいに座る天は、ゆっくりと長い脚を組む。そして、少しだけ顎を上向けて言った。その振る舞いは、まるでキングを連想させた。
「キミの秘密を知ってる、唯一の人間がボクなんて。最高の気分だね」
『え…っと、申し訳ないけど…。べつに天だけじゃ、ないよ』
「……まぁ、社長と姉鷺さんはノーカウントで」
『その2人以外にも、タマちゃんに大和と…Re:valeの2人でしょ?あとMAKAさんとバーのマスター!そこへ今日新たに、紡も加わりました』
「多い。思っていたよりも、多いよ…」
彼は、上向けていた顔をさらに上げて、呆れるように天を仰いだ。
「はぁ…。三つ巴ってだけでも厄介なのに、3つで済みそうにないとか」ぼそ
『え?みつ…、何?ごめん、聞こえなかった』
「聞こえないように言ったから気にしないで」
『気になるなぁ…』