第43章 はじめまして
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「ふぅん。じゃあ、キミに男装をさせたのは姉鷺さんと社長なんだ」
私と天は、コテージの中に戻っていた。
深夜の1時を回っていたが、私達は今までの分を取り返すように喋り続けていた。
『まぁ、他にも理由はあるけど。男の方が都合いいんだよね。
女だからって、頼んでもない容赦情けもかけられないし。
それになにより、売り出し中のイケメンアイドルに 20代の女が引っ付いてたら嫌でしょ』
「まぁ、そういうファン心理は理解できるよ」
天は頷いて、グラスに出したミネラルウォーターに口を付ける。私は、トニックウォーターをストーローから飲んだ。
彼は、自分の事は気にせずに酒を飲んだら良いと言ってくれたが。もう今日は昼間から割と量を飲んでいたので、遠慮した。
『っていうか、気になってたこと聞いていい?』
「どうぞ」
『天は、私が女だって気付いてたでしょ。それっていつから?』
「いつから…って、言われると難しいけど。違和感はずっとあったよ。キミが、周りのスタッフ達にイケメンイケメンって言われてるから、気付くのに時間がかかったけど。
それに、確証を持ったのも最近」
『…そう。最近、か。
これだけ鋭い天を、1年半以上騙くらかせてたって事は…。私、ちゃんと男をやれてるんだね』
「自信持ちなよ。キミの努力の賜物だ。凄いと思うよ?その化粧も、声色も。全部ね。
どこかの蕎麦屋に、爪の垢でも煎じて飲ませてあげたら?」
彼は顎に手をやり、意地悪そうに口角を上げた。
『あっはは!天も、楽の蕎麦屋バージョン知ってるんだ!』
「知ってる。あれで堂々と、蕎麦屋ですって言って IDOLiSH7の寮に乗り込むんだから。神経を疑うよ」