第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
TRIGGERが今日 歌うのは、先日のブラホワでお披露目したばかりの “ Black & White ” だ。
さきほどRe:valeの2人にも、お褒めの言葉を頂いたが。なかなかどうして贔屓目に見ても、今の彼らは格段に良くなっている。
個々の能力うんぬんより、やはりチームワークが良くなったのだろうか。
まぁ、あれだけ1ヶ月間みっちりと3人でレッスンをしたのだ。息が合わないはずがない。
戻ってくる彼らにタオルを手渡す。
『お疲れ様でした』
「ありがとう春人くん。どうだった?」
汗を拭きながら、龍之介が感想を求めて来たので 私は見たままの思いを口にする。
『良かったですよ。今までで1番だと思いました』
「アンタが素直に褒めるの、なんか気持ち悪いな」
失礼な。私だって、良いと思った時は良いと言う。
「Re:valeが出るよ」
天が静かに言ってから、すぐに私はステージに目を向ける。
そういえば、Re:valeを生で聴くのは初めてだ。
この前のブラホワは、なんだかんだバタバタしていて結局見逃してしまったのだ。
ブラホワ総合優勝を果たした2人のステージが、どの位の物なのか。
TRIGGERの今の位地を測るための、良い指針となるだろう。
「みんなー!よろしくお願いしまーす」
元気よくスタッフに挨拶と笑顔を振りまく百。
あの性格は良いなぁ…。周りから好かれやすいタイプの振る舞いが出来るのは、アイドルとしてかなりのステータスだ。
うちにも、あれくらい愛想を元気良く振り撒ける人材が欲しい。
「…ふふ」
そして。その隣で 柔らかく微笑む千。百とはタイプが異なるものの、スタッフからかなりの好印象を獲得しているようだ。
私は隣に立つTRIGGERに目を向ける。
「…なんだよ」
すかさず楽に睨まれてしまった。
まぁ百を手本に出来るとすれば、天くらいだろう。
「ボクはあそこまで能天気には振る舞えないよ」
『まだ何も言ってません』
「えっと…じゃあ俺が」
「「龍は駄目」」
ピシャリと否定された龍之介は、ぐうの音も出ないようだった。それも当然。彼はまだ当分、うちの大切なエロ担当だ。
そうこうしている間に、Re:valeのスタンバイが完了する。
いよいよ、アイドルの頂点の歌が、始まる。