第42章 そんなの、私に分かりませんよ
同じ屋根の下、TRIGGERの面々が揃っている。たとえ私に個室が与えられていようとも、男装を解こうという気は さらさら起きない。
だから仮に同じ部屋で就寝を共にしても、バレはしないだろう。
が、私達は異性。それを自覚しているのが私だけでも、やはり同衾は具合が悪い。
『…実は私、寝相がすこぶる悪いんです』
「そ、そうなの?」
『ええ。病的に』
「おい。嘘付け。お前事務所で限界きて落ちた時、泥のように眠ってたぞ」
「キミ、重ねなくていい嘘を重ねるのやめたら?」
『本当ですよ?大声で歌ったり、激しいダンスを踊り出したりします』
「寝ながらかよ!?それ、本当なら逆に見てみたい案件だぞ」
「あ、あのさ春人くん…一度、お医者さんに診てもらった方がいいよ」
「ほら。純真な龍が信じた」
なかなか引き下がってくれない彼らを、私は強引に2階へ続く階段へと押しやった。
「分かった!分かったから押すな」
「じゃあ、ボクが1人部屋使わせてもらっていいよね。おやすみ」
「はは。俺はいいよ!おやすみ、天」
「ったく。しゃぁねぇな。おやすみ」
天に部屋を譲った 楽と龍之介が相部屋となったらしい。まぁ私からすれば、自分の1人寝を確保出来れば あとはどうでも良かった。
私が、おやすみなさい。と言えば、3人も同じように 就寝の挨拶を返してくれるのだった。
1人になったリビングで、時計を確認する。夜の22時を少し回ったところである。
今日は、いつも以上にハードな1日であった。レギュラー番組の初回撮影に加え、熊もどきとの戦闘。そして、激痛カレーとの格闘。
個人的には、一番最後の項目に 最も生命力を持っていかれたと感じている。
いまソファに腰を落ち着ければ、確実に寝る。その前に、お風呂を済ませてしまおう。
1階にも、質素ながらシャワーが設置されていた。
脱衣所に移動した私は、さきほどまで自分がいたリビングに、顔だけを覗かせる。そして、全員が2階に上がった事をもう一度確かめてから、女の姿に戻った。