第42章 そんなの、私に分かりませんよ
この騒がしい中でも眠り続ける環。
酒に飲まれ、さらに額を強打して気絶した壮五。
そんな2人を、楽と龍之介がそれぞれベットへと運んでいった。
「ふふ…大丈夫?おでこ」
天は優しい表情で、私の額の上で指先を滑らせた。見事なごっつんこだったね。と言って笑ってみせる。
『私は大丈夫です。でも逢坂さんが、気の毒で』
「あぁ。アイドルの顔に傷でも残れば、たしかに気の毒ではあるかもね」
『いえ……。今夜の記憶が、明日に残っていたら気の毒だな と』
「たしかに」
先輩アイドルのプロデューサーに綺麗だと連呼したあげく。女の見えてドキッとした。なんて言ってしまったのだ。そんな記憶が明日まで残っていたなら、それは立派な黒歴史の誕生だ。
どうか彼の記憶が、綺麗さっぱりなくなってくれる事を願うばかりである。
それからしばらくして、楽と龍之介は帰ってきた。
『そろそろ私達も休みましょうか。私もお酒がまわってきました』
「へぇ、そうは見えないけどな」
「いや。春人は酔ってなくても、これ以上飲んだら龍の沖縄弁が炸裂するだろ。その前に解散しとこうぜ」
「賛成」
「酷いなぁ2人とも。俺のこと、面倒な奴みたいに言ってさ…」
これから就寝という事で、考えるべきは部屋割りだ。
環と壮五は2人部屋で就寝中。あと、このコテージに残されている客室は 2部屋である。
『2階に、2人部屋が2室あります。そこを3人で使って下さい』
「春人くんは?俺たち全員で4人なんだから、2人部屋が2つあるなら、ちょうどじゃないか」
『私は、ここで良いです』
「ベットが4つあるのに、わざわざリビングのソファで寝る意味は何なんだよ」
『…アイドルとプロデューサーが同じ部屋で寝るなんて、不謹慎でしょう』
「なに言ってんだ。男と女じゃあるいし。変なところで潔癖だよな、あんた」