第42章 そんなの、私に分かりませんよ
直径15センチはあろうかという大筒から、花火は打ち上がる。花火大会で目にするような それとは比較にならないものの、それなりに立派な大輪が空に咲いた。
良い感じに酒の回った楽が、口の横に手を添えて叫ぶ。
「たまやーー!」
『それ、本当に言う人いるんですね』
「え?言うだろ普通」
「なぁなぁ。なんで花火観ながら、たまやーって言うんだろうな。なんかそれ聞く度に俺、自分の名前呼ばれてんのかと思って、ビクってなる」
「あはは!たしかに “ たまや ” と “ たまき ” は1文字違いだもんね」
龍之介が、ライターを手にテーブルへ戻って来た。
酒を作る係の私以外の人間で、順番に花火に火を点けているのだ。
龍之介の次は、壮五が立ち上がった。しかし、歩き出した1歩目でふらりと よろけた。
「あーもー!そーちゃん あぶねーから、俺が点けてやる!ライター貸して」
「ちょ、ちょっとつまずいちゃっただけだよ?」
言い訳をする壮五だったが、結局は環が点火した。長方形の箱から、たくさんの眩しい光の粒が飛び出した。
『……綺麗ですね』
「うん。ボクはあまり花火ってしたことなかったけど、悪くないもんだね」
「花火に美味い酒に加えて、気の許せる仲間がいるんだぜ?最高だよな」
「なぁ、がっくんが言う、気の許せる仲間ってさ…俺らの事も入ってる?」
「はは、おう。お前も逢坂も、ライバルであり仲間だろ?当たり前じゃねぇか」
「まじ?やった!なんかスゲー嬉しい」
「TRIGGERさんに、そんなふうに言ってもらえるなんて…!うぅっ、感激です!」
「壮五くん、大袈裟だよ!
でも本当に…不思議なくらい満ち足りた気持ちだな…。
ねぇ。また、いつか皆んなで集まりたいね。今度は、IDOLiSH7の子達も一緒に。全員でさ」
『Re:valeのお2人も、声をかければ喜んで来てくれそうです』
私の言葉に、全員が頷いた。そして、また打ち上がった花火を見上げる。
皆んなのその顔は、空に咲いた花よりも晴れやかだった。