第42章 そんなの、私に分かりませんよ
私は、溜息と共に立ち上がる。壮五が、そんな私を不思議そうな顔で見つめた。
“ 四葉さんを止めてきます ”
そう告げようとした時。残念ながら事態は悪転してしまう。
『っ、待っ』
「くらえ!!」
「ちょっ」
私と、環。そして楽の短い声が交錯した。打ち上げ花火に火が点けられたのだ。
楽を追いかける環を、さらに追いかけていた龍之介。なんとか彼が、花火発射前に環の腕を掴む事に成功。
それにより、楽を捉えていた発射口の照準をズラす事が出来た。
「こら環くん!さすがに危ないだろ」
「!?後ろから捕まえるなんて卑怯だっ」
「た、助かったぜ龍…」
シュボっ!
「あ」
シュボ、シュボ!!
まずは1発。筒から花火が飛び出す音。その音と、天の声が重なる。
そして、続けて2発。計3発の花火が、真横に発射された。
真横…というか、こちらに向かって来た!
「「「!!!」」」
楽、龍之介、環も、天に続いて事の大きさに気付いたらしい。そう。花火の発射口は、的確にこちらを捉えていたのだ。
ヒューー と笛の音を鳴らしながら、こちらへ迫っている。そしてそれは、ちょうど壮五の顔の高さだった。
「え」
自分の顔面に、光の玉が突っ込んで来ていると、ようやく悟った壮五。急な事態に固まってしまう。
私は、素早く彼の前に移動。そして
『ふ…!』
そして、体を左に一回転しながら 右足で、向かって来た1発目を一蹴。
蹴られた花火は 左へ走り、茂みの中で炸裂。
再び体を正面に戻せば、2発目がやって来る。今度は左足を使い右回転で蹴り飛ばす。
右へ飛んで行った花火は、木にぶち当たった先で花を咲かせた。
そんな低い位置での花火を鑑賞する間もなく、3発目もやって来る。
今度は、蹴りは使わなかった。ただ右足を大きく上げ、足の裏を正面に向ける。すると花火は 私の足の裏で留まり、ヒューーと高い音を出した。
そのまま花火を足の裏にくっつけた状態で、地面を踏みしめる。
すると、私の足と地面で挟まれた花火は、パァァアン!!と、まるで銃声の如く大音を奏でた。