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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第42章 そんなの、私に分かりませんよ




『持つのはもっと下』

「は、はい!」

『もっとです』

「えぇ!?これ以上ですか?」

『大丈夫です。熱くない、怖くない。ほら。この熱々の火玉は四葉さんなんでしょう?だから平気平気』

「や、やってみます!
これは環くん。環くん。絶対落としちゃいけない…!」ぶつぶつ

『それと、斜め45度を保って持って下さい』


線香花火の火の玉は、3つあったが やがて1つに合体した。それは言うまでもなく巨大となる。


「わ、わっ、やっぱり無茶だったんですよ!見て下さいほら、落ちるっ」

『揺らさない』


壮五は息を止め、真剣な表情で紐を持った。その姿勢に応えるように、手元の花火は 3倍サイズの花を咲かせた。そして、その一生は美しく進んでいく。

そして 火玉は落ちる事なく、最後の最後まで懸命に輝いたのだった。


「っ、や、やった!中崎さん!僕あんなに大きくて綺麗な線香花火、初めて見ました!しかも、最後まで落ちませんでしたよ!」

『ふふ。ね、落ちなかったでしょう?』

「……っ、!」


大袈裟に喜ぶ壮五を見ていると、自然と顔が綻んでしまう。
勢い良く顔を上げたら、意外と私の顔が近くて驚いたのか。壮五は一瞬 目を大きく見開いた。


『まぁ、こんな具合に…。彼の手綱も上手く握ってやって下さい。それはきっと、貴方にしか出来ない事だから』

「は、はい」


何故か壮五は 照れたように顔を伏せたが、この暗さでは顔色を伺う事は出来ない。


「あんたら、2人で何やってんの。さっきから俺の名前、何回も何回も呼んでなかった?」

『気のせいでは?』

「あ、あはは。きっと気のせいだよ」

「ふーーん。あ、線香花火じゃん!俺もやるー」


こちらへやって来た環が、線香花火を持ったので私は火を点けてやる。
すると彼は、速攻で火種を落としてしまって言う。


「あーあ。また落ちた。俺、最後まで線香花火育てられた試しねーの。
あ、でも、火の玉が地面に落ちたら、パァァン!って弾けんじゃん?あれは、俺けっこー好き」

「た、環くん…!あれは、落としちゃ駄目なんだよ!君は何てことを言うんだ!」

「え…?なぁなぁ。そーちゃん、何でそんな興奮してんの?」

『線香花火は、長生きさせてなんぼだ。と、仰りたいのでは?』

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