第42章 そんなの、私に分かりませんよ
「えっと…壮五くん?環くんは、一体どうしちゃったんだろう」
「さ、さぁ…ちょっと僕にもよく分からなくて」
「おい四葉。お前、間違ってるぞ」
楽は、自信満々に言い放った。
「大人の男はな…少年の心を忘れちゃ終わりなんだよ」
「お、おぉ!って、言うことは…!?」
「花火なんかが目の前にありゃ、何歳になってもテンション上がるだろ!」
「おおー!がっくんも花火やりてぇの!?」
「おう。やりたいぞ」
楽のその返事に、環はキラキラと顔を輝かせる。そして眩しい表情そのままに、私の方へ顔を向ける。
「中崎さん!中崎さんもそう思う!?花火は、大人の男も楽しむもん!?」
『…はい。何を隠そう、私もテンション爆上がりです』
「キミはもう少し、台詞に表情を近付ける努力をしなよ」
天の嫌味は聞こえないふりをして、仕掛け花火へと手を伸ばす。そして、ポケットからライターを取り出して導火線に火を付ける。
すぐに導火線は短くなり、やがて筒の中に火を届けた。ババババ、と音を立てながら数多の火花が辺りに弾ける。
自然と全員が、その美しい花火を見つめていた。環も実に良い顔でそれに釘付けになる。そんな彼に、私は告げる。
『綺麗ですね。
美しい物を美しいと思うのに、歳なんて関係ありません。好きな事を全力で楽しむのに、大人も子供も関係ありません。
私は、自分を偽る事をしない 素直な貴方が良いと思いますよ』