第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
目の前で泣いてる、大切な人に優しくしたくて。特別な男の子に、何かしてあげたくて…
私はゆるゆると手を伸ばす。少し乱れた空色の髪に触れようと。
しかし、環はそんな手を振り払った。
「やめろよ!!」
『………』
「あんたは、っ男を慰めんのに頭撫でんのか!?がっくんとか、リュウ兄貴がもし泣いてたら、髪の毛撫でて慰めんのかよ!
…分かってんよ。んなこと、しねぇだろ?俺が…、俺が子供だから…そんなふうに、優しくすんだろ。
なら俺は、そんな特別いらない…!!」
目の前の大切なものが、音を立てて崩れるのを見た。
『…タマちゃんは私に、大人の男として 扱って欲しいの?』
「そうだよ!でも、んなの無理だって分かってんだよ!」
『無理じゃないよ。貴方が “ 特別 ” を手放すって言うんなら…私は、貴方を1人の男として見る』
「……は?何、言ってんのか、よく分かんな」
『私が教えてあげる。女が男を慰める時はね、こうするの』
目の前にある環の顔に、自分の顔をもっと近付ける。そして、無防備な彼の唇を強引に奪った。
こちらは瞳を閉じているので、環の表情を確認する事は叶わないが。きっと、その硝子玉のような瞳が 大きく揺れているのだろう。
やがて、力の抜けてきた唇は薄く開かれる。歯列を割って舌を入れると、すぐに彼のものとぶつかった。
おそらく、初めて他人の舌に触れたのだろう。ピクリと反応を見せる環の身体。
しかし、間を置くことなく舌を舌に絡ませる。
「っ、……! は、」
しばらく なすがままとなっていた環だったが。やがて他人の舌の感触にも慣れたのか、今度は私の口中に自分のそれを差し込んだ。
若く、荒々しい舌使い。ぎこちなくて乱暴ともとれる動きだったが、熱い熱い感情が、流れ込んでくる。舌先が少し動く度に、好きだ。好きだと伝わってくるのだ。
背中に回された腕には、目一杯 力が込められて。息を吸うのも困難だった。
私を想う環の気持ち全部が、注がれるようなキスだった。