第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
四葉環は、私にとって特別だった。
彼は、私にとって初めての観客だったから。
私の歌を聴き、踊りを見て拍手をくれた 初めてのお客さん。私が音を落とせば、キラキラの笑顔を返してくれる。そんな彼が、愛おしくて仕方がなかった。
再会した時は、まさかこんなに格好良くなっているなんて思わなくて。彼と環を結び付ける事が出来なかったけれど。
私は、あの時の少年を忘れた事はなかった。幸せになって欲しいと願ったし、自分が辛い時には心の支えにはなってくれた。
そんな存在を、特別以外の、どんな言葉で表せるだろうか。
しかし…私は、そんな “ 特別 ” を忘れよう。
環がそれを、望むのであれば。
『あの、小さくて可愛いかった男の子。私にとって間違い無く特別で大切だけど…やっぱり付き合うとかは考えられない。
だって彼は、男性 異性じゃなくて、どこまで行っても “ 男の子 ” だから。
私がそのイメージをタマちゃんに持ち続ける限り、貴方を選ぶ事は絶対に出来ないの』
「…………」
『ねぇ聞いてる?大切な話してるよ』
「あ、うん…、聞いてっけど、なんか頭が ぼーっとして…」
初めての口付けが、あれだけ激しいものになったのだ。環が惚けてしまうのも仕方がないのかもしれない。
「とにかく、俺は…えりりんが、俺のこと大人の男として見てくれるんだったら、すげー嬉しい」
『昔のタマちゃんを忘れちゃっても?』
「うん」
『…分かった。じゃあ、あの可愛くて小さかったタマちゃんは、封印ね。
これからは “ 大切な男の子 ” じゃなくて “ 私を想ってくれてる異性 ” として。タマちゃんを見る』
「…ありがと。
恋人にはなれなかったけど、俺 あんたと近付けて、すげぇ嬉しい」
環は、赤い瞳でニコっと笑った。
「俺、やっぱあんたの事すげぇ好きなんだ。だから、なぁ…もっかい、ちゅうしていい?」