第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
「俺と、付き合って下さい」
彼の口から出た言葉は、予想以上の威力を持って私の胸を貫いた。
その真剣な瞳を見れば、冗談の類でない事は一目瞭然。
どう答えるべきか迷いに迷った後、俯いて言う。
『……ごめん、それは 無理だよ』
「なんで?だって、あんた言ったじゃん。俺の望み、何でも叶えてくれるって」
『いや確かに言ったけど。でもまさか、そんな事言い出すなんて』
「は?そんな事ってなんだよ。
俺の願い事…そんな事とか、言うなよ…」
スタンプカードは、よく見ると随分 くたびれていた。きっと彼は、肌身離さず大切に いつも持ち歩いていたのだろう。
自らの願いを、叶えるために。
それを、両手で大切そうに持ち。悲しげな表情で憂う彼を見ていると、私まで胸が締め付けられる思いだった。
『それでも、ごめんね…。私は、タマちゃんとは付き合えない』
「なんでだよ…。なぁ、えりりんは、俺のこと嫌いなの?」
『嫌いな訳ない!タマちゃんは、私の特別だもん。嫌いになんて、絶対になれない』
「じゃあなんで、特別なのに、恋人には選んでくれねぇんだよ…」
“ 貴方は私にとって弟みたいに大切な存在なの ”
そう口を突いて出そうになったが、ギリギリ飲み込んだ。きっとこの言葉は、刃の様に彼の心を傷付ける。
『それは…タマちゃんと私は、ほら。10個も歳が離れてるでしょ?
だから、私なんかを好きでいちゃ駄目だよ。まだ高校生なんだからさ…これから沢山、素敵な出会いがタマちゃんを待ってる』
「…なに、それ。
あんたは、俺に、同じ歳のヤツ好きになれって言ってんの?」
『……うん』
「なん…っだよ!それ!!
俺が好きなのは!あんただって言ってんのに!なんで他のヤツ好きになればいいなんか言うんだよ!」
結局…慎重に選んだつもりの言葉は、環の純粋な心を切り裂いた。