第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
「そうだったのですか…ですが、どうしてそんなに大切な秘密を、私に打ち明けて下さったのですか?」
『あぁそれは…。貴女が、あまりにも気付かないから』
「え…?」
『だって小鳥遊さん、私の靴を見ても、私が地声で喋っても。微塵も気が付かないんですもん。
そんな純粋無垢な貴女を欺き続けるのが…ちょっと、しんどくなっちゃったのかも』
「そ、それは…とんだご迷惑を」
『あはは。迷惑なんかじゃ、ないんですけどね。でも、私弱いんですよ。貴女みたいに、心の綺麗な人に』
彼女のように、純粋な人を見ていると たまにズキリと心が痛んだ。どうして私は、こんなにも優しい人間に 嘘をついているのだろうと。
そして、訳もなくそんな彼女と自分を比べた。
だから、私が彼女に真実を告白したのは、そんな汚い自分を少しでも救いたかったから。なのかもしれない。
私だって…嘘を吐き続ける事で、痛んでしまうような 心を持っている。そういう、普通の人間なのだと。思いたかったのかもしれない。
「どうして…そんなに悲しい顔で笑うんですか?」
『…どうしてでしょうね。貴女と私が、あまりに違うからかもしれません。
私も、出来る事なら 貴女のような純真な人間に産まれたかった』
「私…、私は」
突然こんな告白をされては、いくら優しい彼女であろうと、迷惑でしかないだろう。
両の手を ぎゅっと握り込み、拳を震わせる紡を見て、秘密を打ち明けた事を少し後悔した。
「私は… 貴女の事が、好きです!!」
『……え』
「いつも120%の力で、お仕事に打ち込む姿勢も!冷たいようでいて、困った人を放っておけない優しいところも!他人を助ける為に、熊にだって立ち向かう その無茶苦茶なところも!TRIGGERさんを、世界で1番 愛してる貴方も…
私は、全部 全部っ、大好きでした!」
『か…過去形…』
「それは…っ、私にも、色々と複雑な事情があるんです。とにかく!!私は、貴女には 貴女でいて欲しいんです。だから、私みたいに産まれたかったなんて悲しい事を 言わないで下さい」
眉根を寄せて、今にも泣きそうな彼女。私もつられて落涙しそうになるのを ぐっと堪えて…
紡の頭に、優しく手を置いた。
『…うん。ありがとう 紡』