第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
生命の維持を脅かされる、極限状態。そんな非日常を乗り越えた私達は、極端に笑いのハードルが低くなっていたのかもしれない。
が、いつまでも馬鹿笑いをしている場合ではない。
『あぁ、笑った…。では、私は “ 後処理 ” をするので。小鳥遊さんは、皆さんと一緒にコテージへ帰っていてもらえますか?』
「…お1人で、大丈夫ですか?」
『ええ』
私が気絶した不良を運ぶので、紡は全員を連れて この場を離れてくれ。
その意図をすぐに理解してくれたようだ。
紡は、多少 強引にではあるが、5人を連れて坂を上って行った。
その後は、控えめに言って、かなりしんどかった。1人で大の男を引きずるようにして、コテージまで運んだのだ。
本当に、途中で何度 この場に埋めてやろうかと思ったほど。
それから、一部始終をオーナーに連絡。そうすると、彼の方から事後処理を申し出てくれた。勿論、討伐隊はすぐに解散。
後のことは、オーナーの采配に任せる事にして、私は皆んなの待つコテージに帰った。
『………』
(天は…怒っているだろうか)
一抹の不安を胸に抱えたまま、私は扉を押す。
するとそこには、質問攻めにあっている紡の姿があった。
「本当に…人が、熊に勝てるものなの…?春人くんが、やったんだよね?それも素手で…」
「えっと…はぃ、まぁ…そうです、ね」
「まじかよ…あいつ、いよいよ化け物だな」
『化け物で、悪かったですね』
「おかえり。プロデューサー」
天は、笑顔でそう言った。
私が約束を破った事を、怒ってはいないのだろうか?それとも、自分達もコテージの外へ出たから 強く言えないだけか?
彼ら全員を引き連れて、外に出た事を咎めたい気持ちは、私にもある。が、天を怒る資格は無い。
だって、私達は互いに約束を破ったのだから。
とにかく今は、彼の笑顔が見られた事に、心の底から安堵した。