第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
熊の双肩に両手を突き、そのままの勢いで体を持ち上げる、そして膝で2発。左、右と 熊の顎にぶち込んだ。
こんな飛び膝蹴りくらいじゃ、ビクともしない。だから空中にいる間に、次の攻撃の段取りを組む。
つもり、だったのだが…
「ぐ……は」
『え?』
なんと、熊はどさりと後ろに倒れてしまったのだ。
その熊らしからぬ戦闘力に拍子抜けして、着地をミスるところだった。しかし、なんとか両足を地面につける。
『は…?いやいや、さすがにそんなには私、強くない…はず』
「だ、大丈夫ですか!?」
駆け寄ってくる紡。無事なその姿を見て、初めて ひと息ついた。
そこで、ようやく違和感に気付いたのである。
それを確固たるものにする為、私は伸びている熊に歩み寄る。
「危ないです!早く今のうちに逃げましょう!」
『いや…。よく見て小鳥遊さん。これ、熊じゃないです』
「………え?」
私が熊の頭を持ち上げると、それはまるで帽子のようにずるりと脱げる。そして、中からは人の顔が出て来たのだ。
「ひ、人間…!?これはまさか、熊の剥製着ぐるみ…」
『と、いうか。これ、隣のコテージにいたガラの悪い男達ですよね』
「そうですよ…!たしか、お昼にお会いした方です!」
気を失った熊 もとい不良の側で屈んでいると、近くの木の影から、視線を感じた。
姿勢を低くしたままで、そちらへ視線をやる。そこには、残りの不良がいた。2人の不良は、身を寄せ合ってこちらを見つめている。
「ひ、ひぃっ」
「わ 悪かった!謝るから、こ、殺さないで!俺達はただ…っ、あんたらをちょっと驚かせようと思っただけで!」
「そうだ!そうなんだ!昼間、恥をかかされたから、軽い仕返しのつもりで…っ」
「その、ちょっとした悪戯っていうか!」
こいつらは…何を言っているのだろう。
ちょっと驚かせる?仕返し?悪戯?
馬鹿も休み休み言え。