• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ




しかし。またしても、私の目論見は外れる事となる。

熊さんは、下り坂なんて なんのその。器用にお尻を地面につけて、滑り降りてきたではないか。

私は、右手を広げて その後ろ手に紡を庇う。


『…はぁ。熊、やば。何の情報も通用しないとか』

「っ、中崎さん、こうなったら…もう、あの手しかっ」

『あの手?』


紡は、その場にパタリと倒れ込んだ。仰向けに。


「死んだ、ふりです」

『それ1番駄目な奴』


死んだふりは、昨今ではあまり有効な手段とは言えない。
が。後ずさりも、下り坂も通用しなかったのだ。もう打つ手がないのも事実。

私は、半ば諦めの境地で 構えを取る。


『紡。うつ伏せになって、首の後ろを両手でガード。絶対に頭上げないで』

「え、え…?分かりました、けど…中崎さんも早く死んだふりをし」

『いいから。早く頭下げる』

「は、はいっ!」


大人しく言う事をきく紡に、小さく いい子。と呟いてから、私は改めて熊に対峙する。

立ち上がる姿は、全長2メートルほどだろうか。多分、熊にしては小柄な方だと思う。そして、全体的に貧相だ。もしかすると、餓えているのかもしれない。だとすれば危険度は跳ね上がる。

だがやはり、私の目にはそれほど脅威的に映らなかった。自分でも驚くほど落ち着いていた。


『…やって、やれない事はない』


独りごちてから、私は目の前の獣に向かって飛びかかった。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp