第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
ダッシュで走ると、あっという間に駐車場に到着してしまった。その道中、紡には会っていない。
『っ、…は…はぁっ』
私は息を落ち着けながら、停めてある車をぐるりと見渡す。
すると…
「あれ…どうされたんですか?中崎さんも、何か取りに来られたんですか?」
『……っ、』
私は、彼女をぎゅっと抱き締めた。
「っひゃ、!?」
『はぁ…っ、は…、良かった…』
「え?中崎、さん?」
目が点になり、赤面する彼女の腕を掴んだ。そして足早に歩き出す。
当然 紡は不思議そうにしていたが、今この場で熊がどうこうと説明するつもりはない。
元々、遭遇する確率の方が低いのだ。ならわざわざ、彼女を怖がらせる必要はない。とにかく安全にコテージに帰り着くこと。それだけを考えよう。
コテージと駐車場を結ぶ道は1本だ。その一本道の両脇には、木々生い茂る森がある。ただ、木の杭とロープで簡単には立ち入れないように整備されていた。向こう側は、若干の下り坂になっているようだ。
きょろきょろと辺りを見回しながら、腕を引き続ける私を、彼女は不安げに見上げている。
「えっと…。あ、その鉢巻?ナイスアイデアですね!落書きも隠れていますし、応援団みたいでお似合いです」
『ありがとうございます』
私がそう答えた時。
2人の歩みはピタリと止まる。目の前に現れた、獣の存在に気が付いたからだ。
小鳥遊紡の手に握られていた、クレンジングオイルが ゴン。と音を立てて地面に落ちた。
「……っっきゃ」
『しっ!』
彼女が叫び声を上げそうになったので、私はその口元を手で覆う。
熊に、大声は厳禁だ。とにかく、刺激してはいけない。
『…紡。両手を上げて』
「は、…はひ?」