第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
さらに、こう付け足した。
「中崎さんも、意外と可愛らしいところがおありなんですね」
『…は?』
「あ!すみません私ったら、知ったような口をきいてしまって」
『いや、それは構わないのですが…
可愛い要素、どこかにありましたか?』
「あんな細工をされた靴を履いてまで、ご自分の身長を高く見せようとしていらっしゃるなんて。ふふ、なんだか可愛らしいな と思ったんです」
そうか。彼女の性格を失念していた。この人は、物事を深読みしたりはしない人種だったのだ。私の本当の性別に気付く様子すらない。
天然で、無垢。私とは程遠い。そして私はそんな彼女が、存外 嫌いではない。
『はは。可愛いかは置いておいて、TRIGGERの3人の隣に立つ身としては、色々と気を使うのですよ』
「なるほど、そうですよね…
あっ、すみません!よくよく考えると、男の方に可愛いだなんて何度も言ってしまってました!」
『気にしてませんよ。
まぁ、私なんかより 貴女の方がずっと可愛いとは思いましたけど』
「え……っ、そんな こ…とは、全然っ」
「絶賛口説き中のところ申し訳ないけど、キミ今、自分がキン肉●ンだってこと覚えてる?
いくらキザな台詞並べても、ギャグにしか聞こえないからね」
『…口説いてないですし、ギャグを言ってるつもりもありません』
コテージに戻ったと思っていた天が、いつのに間やら私と紡の側に立っていた。
赤みを帯びていた紡の顔が、より真っ赤に染まる。
「あっ…っ、その、私…!っ、車に置いてある、クレンジング持って来ます!!」
『…クレンジング?』
「キミの額のそれ、消す為にでしょ」
『あぁ、なるほど』
私は、どんどん小さくなっていく彼女の姿を見送った。
車を停めてある駐車場は、ここから歩いて10分ほど。何度も1人で往復していたし、付き添いは不要だろう。
私は、若干 不機嫌な天と共にコテージへと入った。