第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
この一件での一番の被害者は、何を隠そう小鳥遊紡だ。可哀想に、先程から私に謝りっぱなしである。
「うぅ、本当に申し訳ありません!!人様のお顔に、落書きをするなんて…!私が普段から、きちんと言っておかなかったのが悪いんです!」
『いや、それを普段から注意するのって、なかなかハードル高くないです?』
「そ、そうかもしれませんが…。ですが、こうなったからには私が責任を持って!その肉の字を綺麗にしてみせます!
たしかキッチンにハイターがあったのを見たので、まずはそれから試してみましょう!」
『ハイターはさすがに、肌が死ぬかもしれません。もしかして、小鳥遊さん結構いま動転してます?』
「しています!」
『あ、やっぱり。いや、本当に気にしなくて大丈夫ですよ』
「そういう訳には…だって、よりにもよって油性ペンですよ…」
『え!?これ油性!?』
「だ、そうなんです」うぅ
『まぁ、いいですけど。済んだ事ですし』
彼女があまりにも不憫だったのと、環がシュンとしているのが可哀想で。
私は怒る気にもなれなかった。
「あんた、心広いのか狭いのか どっちなんだよ」
「それよりも、ピーマンどれだけ嫌だったんだ って話でしょ」
「春人くんに、ピーマンは一生近付けないって誓ったよ。俺は」
TRIGGERの3人は、半ば呆れ気味にそう言った。そして、全員がゾロゾロとコテージへと帰っていく。
その最後尾に着く紡に、私はそっと声を掛ける。
『あの…ところで、小鳥遊さん』
「はい?」
『私の、靴を…見たんですよね』
彼女は、大きなくりくりの目で私を見上げる。
『えっと、私が身長をカサ増ししているのには訳があってですね』
もしかすると、彼女には私が女性であると気付かれてしまった可能性もある。もしそうならば、早めに口封じをしておきたい。
そんな利己的な考えを巡らせていた私に、紡はふふ。と笑って告げる。
「安心して下さい。私、誰にも言ったりしませんよ?あの特別な靴のこと」