第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
靴の居場所は分かったが、いかんせん立ち上がる事が出来ない。立てば、私の身長が明らかに低いとバレてしまう。
「じゃあ、俺がとってくるよ。春人くんはそこで待っててくれ」
『あ、龍』
「なに?」
『おんぶ』
私は、子供がするみたいに両腕を龍之介へと伸ばして言った。その様子と言葉に、全員がもれなく固まった。
しかし、頼まれた本人はすぐにニコっと笑う。
「あはは。なんだか今日の春人くんは可愛いな。いいよ、おぶってあげる」
「なっ、なんでそうなるんだよ!ここに靴を持ってくりゃいいだけの話だろ!」
『靴を私の所へ持ってくるのではなく、私が靴の所へ行きたいんです』
「だからそれの意味が分からねぇって言ってんだよ!」
「じゃあ俺!俺が中崎さん運ぶ!おぶる!な!?いいだろ!?」
『まぁ、誰でもいいです』
「う…なんか、そういう言い方をされると、意味も無く傷ついちゃうんだけど」誰でも良かったんだ
龍之介を指名したのは、彼が優しくて 深くものを考えずに了承してくれると思ったから。
他事務所の環をいきなり指名するのは不自然だが、立候補してくれた場合は話が別だ。お言葉に甘えるのは自然な流れだろう。
しかし、ここで1番以外な人物が名乗りを上げる。
「じゃあボクが連れて行くよ」
そう言ったのは、天だった。
明らかに、1番嫌がりそうな彼が 立候補したのだ。周りも全員、驚きのあまり息を飲んだ。
「なに。誰でもいいんでしょ?」
『あ…はい』
「じゃあ早くして」
一抹の不安を覚えたものの、ベットへ身を屈める天の背中に身を寄せた。