第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ

『…………』

「どうするの。プロデューサーから、黒いオーラが止まらないんだけど」

「1番の原因作ったのはてんてんじゃね？ほら、汚染されたトング使うから」

「やべぇ…激おこだぜ、ありゃ」


1人椅子に座り、俯く私。彼らは遠巻きにそんな姿を見て、何やら相談している。


「おい。ここは、四葉か龍の出番だろ」

「「えぇ！？」」

「確かに。プロデューサー、キミ達には比較的 物腰が柔らかいよね」

「俺やだ。ぜってーやだ。今の中崎さんに近付いたら、嫌われるかもしんねーし」

「じゃあ龍だな。よし、行って来い！」

「え、えぇー…嫌だなぁ…。まぁでも、春人くんがあぁなっちゃったのは、俺の責任でもあるし…
よし！行ってくるよ」


龍之介が私の元へ歩み寄る。しかし私は、背後から近付く彼に気付かず、小さく独りごちる。


「え、っと…春人くーん…？」

『あぁ、そうか…。2人に拘束された時、私は体を大きく仰け反らせて、後頭部を楽の顔面にぶつければ逃げ果せたかもな。まぁそうなった場合、楽の鼻が粉砕されると思うけど』ぶつぶつ…


トボトボと、龍之介はみんなの元へ帰る。


「龍が帰って来た」

「おい！どうだった？あいつまだ怒ってるか？」

「…楽の鼻が、粉々になるかもしれない…っ！」

「自分の所のアイドルの顔面を粉砕！？」


また、ガヤガヤと彼らは話し始める。


「あの春人くんが、丁寧語も使ってなかったんだよ？あんな状態、初めて見た…」

「は？ピーマン食べさせられたくらいで？」

「おいやめろ天！あいつに聞かれたら鼻を粉々にされるぞ！」

「あーあー。俺、知ーらね！」

「…ここは、僕が頑張ってみます」

「そーちゃん！？」

「それは…妙案かもな。いくらあいつが怒ってても、他事務所のアイドルには強く当たれねぇだろうし」

「壮五くん…じゃあ悪いけど、お願い出来るかな？」

「はい！任せて下さい！実は、中崎さんにも喜んでもらえると思う、とっておきのアイテムがあるんです！先にそれをコテージに取りに行ってきますね！」

「プロデューサーが喜ぶようなアイテム？何それ」

「さぁ。もう走って行っちまった。逢坂は一体、何を持って行くつもりなんだ？」

「分からないけど、とりあえず今は壮五くんに任せてみよう」