第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
私は、自由な足を楽の股の間に通す。
「ちょ!お前っ、アイドル張り倒す準備するんじゃねえよ!」
『張り倒すんじゃなくて投げ飛ばすんです!』
「大差ねぇだろ!おい龍っ!お前も押さえるの手伝え!」
さすがに、2人に体を拘束されては身動きが出来なくなる。私は龍之介に懇願する。
『龍、龍は私の味方ですよね!信じてますよ龍!』
「プロデューサーさんのキャラクターが崩壊していくね…環くん」
「うん。中崎さんがあんな必死なとこ、俺、初めて見た」
「…春人くん、ごめんね…」
龍之介は、悲しげな瞳で私を見上げ、足元に屈む。そしてガッチリと脚を押さえにかかったのだ。
『な、なんで!?そこまで貴方達を突き動かすパワーは何なんです!?』
「俺は、春人くんに健康になって欲しいんだ」
『そんな綺麗な目で言われたら何も言えない!!』
「俺は嫌がらせだけどな」
「ボクはカレーの恨みかな」
身動きの取れなくなった私に、じりじりと天がにじり寄る。トングに挟まれた緑の悪魔が近付いてくる。
と、その時…私は気付いてしまったのだ。
『ちょ!天!待って天!』
「待たない」
『違うんです!!それ、そのトング!それ肉焼いてた奴!生肉掴んでた奴!ピーマンどうこうの前に、そのトングはヤバイですって!』
「……ははっ」
『いくらアイドルスマイルでも、誤魔化せない事もありますよ!ちょっ、待って、マジで待っ』
断末魔が辺りを切り裂いた。
そんなピーマン地獄の隣で、MEZZO"は平和な会話を繰り広げていた。
「…そーちゃん。俺、今度からちゃんとピーマン食うよ…」
「偉いよ環くん!野菜を食べない悪い子は、皆んなああいう目に合っちゃうんだよ?だから、ちゃんと食べようね」