第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
全員がまともな状態に戻ったところで、片付けモードに入る。
ふと、天が私の使っていた皿を見て ポツリと呟いた。
「……ピーマン」
そのひと言で、全員が私のお皿に注目する。
そこには、綺麗に端へ寄せられた いくつものピーマンがあった。
「そっかぁ。春人くんは、ピーマンが苦手だったんだね」
『……』ぎく
「子供みたいな事しないでよ…」
「どんまーーい中崎さん!ピーマンなんて食わなくても、生きてけっから大丈夫!」
「もう。環くんは、自分も食べられないからってそんな事言って…」
周りから色々と言われて、何と返したら良いのか分からない。こんなにも窮地に追いやられた経験は、あまりない。
ここから挽回は可能なのだろうか?もう、ピーマンが苦手という情けなさ過ぎる弱点を認めるしかないのか…!
そんな私へ追い打ちをかけるように、楽がニヤニヤして言う。
「おい春人。残すんじゃねぇぞ」
『これは残してるんじゃありませんよ?袋に入れて持って帰って、千さんにあげるんです』
「おい。俺たちの先輩を、家で飼ってる犬みたいな扱いするんじゃねぇよ」
私の無理くりな言い訳のせいで、千を犬にしてしまった。募る罪悪感。しかし、食べたくない物は食べたくない。
私は胸に手を当てて、真摯に説明する。
『私は、ピーマンを、食べません。なぜなら、それは、苦いからです』
「春人くん?英語の教科書みたいな喋り方になってるよ!?」
『…じゃあ、あれですよ。アレルギーです』
「あ。雑になった」
ガシ。
いつの間にか、私の後ろに回っていた楽。何を思ったのか、突如として羽交い締めにした。
それを確認した瞬間、天は近くにあったトングでピーマンをつまむ。
『……どういうつもりですか、楽』
「いや何って。どうしても、お前にピーマンを食わせたくてな」
『……天は?』
「心は痛むけどね。キミの体を考えると、仕方ないかなって」
『ピーマンの栄養素は他で補いますから!すぐに放して下さい!』