第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
「龍!正気か!あのプライドの高い天に、あの天に、現場放棄させるぐらいの代物だぞ!」
「楽…。俺ね…さっき、思っちゃったんだよ。
俺が、天じゃなくて良かった。これを食べる役目を担っているのが、俺じゃなくて良かったって。
最低だよな。俺、天は仲間なのに」
「大丈夫だ!龍!俺だって同じように思った!だから、お前だけがそんなふうに責任を負う必要はねえ!」
「がっくんの言う通りだって!俺だって同じ様に思ったって!」
「いいんだ…これは、そんなふうに思ってしまった俺への、報いだから。
先に、いくね」
ぱく。
龍之介は、キラリと儚い笑顔を残してから…。カレーを口に入れた。
「龍ーーー!」
「リュウ兄貴ーー!」
「??
大丈夫ですよ?まだ沢山あるので」
「………ぐふっ!」
意味不明な事を口走る壮五の隣で、龍之介は異音を発した。
そして、天と同じ様に口を手で覆って コテージへと消えて行った。
またしても、空席が増えてしまった。
「お、おい…冗談じゃねえぞ、なんだこの物体Xは…!」
「リュウ兄貴まで犠牲になっちまったぁ!」
《 食べて 》
「っく、あいつ…!」
《 食べろ 》
「うぅ…!ひでぇよ、なんで、どこでなに間違って、こんな事に…!ぐす」
やっと。諦めたように、楽と環は動く。
目をぎゅっと閉じて、匙を口に運んだのだ。
「どうですか?美味しいですか?」にこにこ
「…………っっ!」
「っ……ん゛ん゛っーーー!!」
例の如く立ち上がった2人は、またしても一目散に走り出す。
「っ、お前!!この後覚えてろよ!!」
「〜〜っ、中崎さぁぁーーーぁん!!」
飲み込んだのなら、走り出す必要はないだろうに…。それとも、正常な判断を人から奪うような物質でも入っていたのだろうか。
とりあえず環の、感極まったら私の名を叫ぶ癖をどうにかしなければいけない。
「え…っと、何故か皆んながどこかへ行ってしまったので。僕も、こちらのカレーを戴きたいと思います!
いただきます。
……んっ、」
ひと口だけ食した壮五が、ピクリと動く。
「うわぁ、美味しい!程よい辛味が、カレーらしくて素晴らしいです!これは、いくらでもいけちゃいますね」
と。その後すぐ監督のオーケーが出て、一旦カメラが止まったのだった。