第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
《 このまま続けて。進行は逢坂さん 》
私が掲げたカンペに、4人はすぐ気が付いたようだ。指名された壮五は、いち早く反応した。
「九条さんに、喜んで貰えたみたいで 凄く嬉しいです!」
「喜んで…たのかなぁ」
(俺が食べる役じゃなくて良かった)
「ま、まぁ…そう見えなくも、なかったかもな」
(俺が食べる役じゃなくて良かった)
「俺が食べる役じゃなくて良かったー」
(俺が食べる役じゃなくて良かったー)
天が消えた方向を見つめながら、3人は言った。
すかさず私は、さらにカンペに追記する。
《 全員で食べて 》
ガタ!!っと、壮五以外の3人は立ち上がる。
「せっかくなので、全員でいただきましょうか!絶対に美味しいですよ!自信作です♪」
「〜っおい、あいつ、まじで鬼畜過ぎるだろ!」
「春人くん…!酷いよ…!」
「うぅ…。俺、なんか悪い事した?悪い子だった?」ぐす
口の中で、明らかに文句を言っている3人。対して壮五は、意気揚々と全員分のカレーをよそい始めた。
……少しだけ、目が痛い。
私以外にも、目をこすったり 現場から距離を取るスタッフの姿が見受けられる。
「お待たせしました。どうぞ!僕と環くんの自信作です」
「俺には自信なんか1ミリもねぇよ…っ!」
懇願する顔を、私に向けてくる3人。
私は、大きく太い字でカンペを書き 容赦なく上へと掲げる。
《 食べて 》
「お、鬼だ!そーちゃん!あの人鬼だよ!」
「え?」
「くそ…!食うしか、ねぇのか!」
「……よし。俺は、決めた。食べるよ」
膠着状態を打開したのは、龍之介であった。