第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
「環くん!九条さんのコメントより先に感想言っちゃ駄目じゃないか!どうもすみません」
まさか、自分の方が天の怒りを買っていると 露ほども思っていない壮五。
完全なる善意から、ついにカレーを勧めてしまった。
「すみません九条さん。僕達の美味しいカレーを食べて、どうか許して下さい。
さぁ、どうぞ」
「………」
「どうぞ!」
「………」
「く、九条さん?どうぞ…」
いくら沈黙で逃れようとしたとて、許されるはずもなく。天はついに、カレーをひと匙すくった。
それを口元へ近付けると 刺激臭が鼻から入ったからなのか、天は咳き込んだ。
そんな様子を見た3人は、心配して声をかける。
「おい天…それ、ほんとに食うのか…?」
「やめといた方がいいって、マジで…てんてんは、そーちゃんのカレーなめてんよ。もしかすっと、死んじゃうかもしんない…」
「無理するなよ天。あ、スタッフさんにバケツ用意して貰う?」
「っ、馬鹿言わないで。アイドルが、一度口に入れたものをバケツに出すわけないでしょ…!
い、いただきます…」
カメラ目線を決めた後、天は勢い良くパクリとカレーを口に入れた。
「………」
「て、天!!お前大丈夫か!」
「ちょ、めちゃくちゃ固まってる!天!」
「てんてん!生きて!てんてーん!」
「え?そんなふうにフリーズしちゃうくらい美味しいですか?」
「………っく!!」
天は 口元を押さえて、ガッと立ち上がった。そして、一目散にコテージの方へ走り出したのだった。
カメラにがっつりと背を向ける天は、とても貴重である。彼の姿が見えなくなるまで、レンズは天を追っていた。
楽と龍之介と環の3人は、顔面蒼白で 空白になった席を見つめていた。
『あ、すみません。それ、私に貸してもらっても良いですか?』
「いいですよ!」
私は、カンペを持つディレクターに声をかける。そして、スケッチブックを受け取った。
サラサラとペンを走らせ、4人の方にカンペを向ける。